ちいちゃんのかげおくり、というお話をご存知でしょうか。 とても悲しい、戦争の犠牲となった小さな女の子のお話なのですが、 話の中で、かげおくりという遊びをしているシーンがあります。 よく晴れた日に自分の影を10数える間見つめてから空を見上げると、 白い影となって空に浮かび上がる、という遊びです。
これは色の世界では、「補色残像現象」という名がついています。 ある一定のものを見続けていると、その色の補色にあたる色が残像として残り、 まるでその色が見えているかのような状態になってしまうという現象です。
「補色」というのは色の円、色相環でいう所の対となる色のことです。 たとえば12色相環でいうと、赤は緑、黄色は紫、青は橙がそれにあたります。 冒頭のかげおくりで見ていたのは影、つまりは黒なのですが、 黒は明度しか持たない無彩色なので、対となる白が補色となった、と言うことになります。
そういった意味ではこのお話は、戦争によって失ってしまった色彩を より強く際立てているのかもしれません。 また失うことがないよう、心にも刻んでおこうと思います。
参考見聞:ちいちゃんのかげおくり あまんきみこ 作